■河岸段丘の形成要因と多摩川が生み出した地形

河岸段丘の形成要因と多摩川が生み出した地形

河岸段丘とは
 河岸段丘は河川の浸食作用や土地の隆起によって形成される地形で、平坦な部分を段丘面、傾斜部分を段丘崖と呼ぶ。段丘面では地下水面が低く、段丘崖では湧水が出ることが多い。今回は多摩川がつくり出した地形である国分寺崖線をフィールドに河岸段丘の成り立ちから、崖線の湧水が集まる野川の河川環境の調査を行った。

河岸段丘の形成過程
 河川が大きく蛇行することで侵食作用によって谷底平野が広がっていく。次に土地の隆起や海水面の上昇により河川の下方侵食力が増大することで段丘面が形成されていく。河岸段丘の形成過程では、地殻変動による隆起だけでなく、気候変動による海水面の変化が大きな影響を与えたと考えられる。寒冷な気候では、海水面が低下することで、河川の下方向への侵食が進み、河岸段丘が形成される。

河岸段丘の土地利用
 河岸段丘の構成要素である、段丘面では平面の土地利用として果樹園や畑などの農地が見られます。一方で傾斜のある段丘崖では雑木林が広がり、湧水の源泉として別荘などの立地に適しています。低い段丘面では水田がよく見られます。


○高校地学での河岸段丘の取り扱い
 大きな河川の所々に、段々の地形が残されている。これは過去の河川の跡であり、河岸段丘とよばれる。一般には、高い位置の段丘ほど古い時代のものである。河川における堆積作用と侵食作用の大きさは、気候変動や地殻変動、海洋順変動の影響を受けて変化する。海水順が高い時には、緩い傾斜の平野部の河川では、河川の周りに洪水時の氾濫原堆積物がたまる。また、蛇行を繰り返す河川が発達し、蛇行した河川は洪水時に新しい流れが形成され、河川の位置を変える。一方、今から約2万年前の最終氷期には、海水準が約120メートル以上も下がり海岸線が大幅に交代した。そのため、河川の下流の勾配が急になり、下流域で川底の侵食(下刻)が起こり、それまでの海岸平野や氾濫原を削って段丘をつくった。海水順の相対的な変動は、氷河の消長による場合のほかに、地殻変動によっても起こる。このように、気候変動や海水順の上下に伴う堆積作用と侵食作用の変化によって河川の位置の変化や平野の発達が起こり、また海水順が一定であっても地殻変動によって隆起して段丘が形成される。(もう一度読む数研の高校地学)

○高校地理での河岸段丘の取り扱い
 沖積平野は、一般に水の便が豊かで、水質もよい。また、土地の隆起は、しばしば河川の下刻をもたらし、急氾濫原が高い位置に残る。これを河岸段丘と呼び、たびたび隆起のあったところには数段の段丘がみられる。(もう一度読む山川地理学)

多摩川河岸段丘

○立川崖線
 立川崖線は立川段丘面とその下の面の間にある崖線で、昭島市拝島駅の南方から宮沢を経て、立川柴崎町の普済寺に達する。そこから谷保天に向かって甲州街道の北側を平行に走り南武線分倍河原駅まで延びている。立川崖線の下では数カ所で湧水が見られ、立川市国立市に広がる矢川緑地も含まれる。

○青柳崖線
 青柳崖線は、青柳段丘面と沖積地の境にある崖線である。立川普済寺付近から国立市谷保天満宮付近まで延び、連続した斜面林の景観を良く残している。ハケ下には「ママ下湧水」などがあり、豊富な湧水に恵まれ、沖積地に広がる水田の背後に斜面林がある。
 


○古多摩川が造った国分寺崖線
 国分寺市を横断する国分寺崖線は、通称「ハケ」と呼ばれ、国分寺の地形の特色を示すもので、武蔵村山市付近から始まり、国分寺市内ではっきり姿があらわれ、小金井、三鷹、調布、世田谷へと続き、総延長20キロに及ぶ。武蔵野台地の原型は、今から15万年〜7万年前までの、地球が比較的温暖な時代に、多摩川が流路を変えながら大量の土砂を堆積して造りあげたもので、青梅付近を頂点とした扇状の地形をしている。その後、約3万年〜1万年前ごろ、地球の寒冷化に伴い、海面が低下することで、多摩川の流れが急になり、武蔵野段丘面を削り取り、現在の武蔵野段丘と多摩丘陵の間に河川を広げ、立川段丘面を造りあげた。

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*野川の源流となるお鷹の道湧水(現在の日立研究所が主な源流)

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貫井神社の境内からも清水が湧き出る

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*かつて境内には湧水を利用したプールがあった

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*野川は国分寺市小金井市で管轄所が異なるため国分寺市側はコンクリートで覆われている

 


多摩川周辺の地質調査
 地層面の下はそれぞれの時代に堆積した地層が何層にも重なっており、表面の黒土層と関東ローム層は、主として火山灰起源の風成層である。粘土質砂層と青柳砂礫層は多摩川が運んできた地層、上層層群は東京の基盤となっている地層である。

・黒土層
→約5千年前以降の地層。浅間山富士火山の噴火による黒煙火山灰と、有機質からできる層。
関東ローム層(青柳ローム層)
→約1.5万〜1万年前の地層。古富士火山の噴火時に飛来した火山灰が積もる。
・粘土質砂層
・砂礫層(青柳砂礫層)
  →約2万年前の地層。多摩川が運んできた砂や石の層。雨水はこの礫層を浸透し、粘土層の上を通る。礫層が露出する凱旋から地下水が湧出する。
・粘土層
  →約50万年前以前の地層。層内からは会の化石が産出する。

 

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※段丘崖(ハケ)では赤土の関東ローム層が確認できる

◎野川の生き物

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*オイカワ*シマドジョウ*外来種グッピー

○参考文献 『くにたちの河岸段丘ハケ展』 くにたち郷土文化館
平成二十四年度 秋季企画展 ハケ展 くにたちの河岸段丘