◇平和教育実践研究会 5月例会記録
テーマ 「国際理解教育と平和」
5月例会は「国際理解教育と平和」というテーマのもとマレーシアに留学経験のある尾藤葉菜さんから「留学体験を通して考える国際理解と平和」について。西村美智子先生から「国際理解教育と平和教育 その関係性と教育実践」について国際理解教育の目標、国際理解教育の授業実践の発表をしていただきました。
◯国際理解教育とは・・・
「国際化・グローバル化した現代世界社会の中で生きていくために必要な量備や能力を育成する教育」であり、「人権の尊重を基盤として、現代社会の基本的な特質である文化的多様性および相互依存性への認識を深めるとともに、異なる文化に対する寛容な態度と、地域・国家・地球社会の一員としての自覚を持って、地球的課題の解決に向けて様々なレベルで社会に参加し、他者と協力しょうとする意思を有する人間である。同時に、情報社会の中で的確な判断をし、異なる文化を持つ他者とコミュニュケーションを行なう技能を有する人間を育成する」ことを目指している。
◯国際理解教育における体験学習
国際理解教育の中で特に重視されているのが体験学習である。体験とは何らかの学習目標を達成するための方法と考えられるが、体験すること自体の中に、学習者にとっての様々な気づきや発見、喜びや感動があり、それらの重要性を授業者がより意識的にカリキュラムに組み込むために、体験目標を設定する。
①(人と) 出会う・交流する→気づく・発見する
【知識・技能目標】
②(何かを)やってみる・挑戦する→わかる・納得する【思考・判断・表現目標】
③(社会に)参加する・行動する→実感する・共感する【学びに向かう意欲・態度】
◯国際理解教育と平和教育
「国際理解教育」とは「国連憲章、ユネスコ憲章および世界人権宣言によって要望されているところを、「教育」を通じて実現せんとするものでありこれは日本国憲法、教育基本法と共通するものである。国連諸団体が進めてきた「国際理解教育」と各種民教連団体が進めてきた「平和教育」を分離して捉えるのではなく、平和のための「国際理解教育」として目的地は同じ方向性を向くことが必要である。以下、国際理解教育学会の嶺井明子氏の論考を抜粋する。(『国際理解教育vol30』を参照)
朝鮮戦争に象徴される米ソ冷戦と国際情勢が陰を落とすこととなった。「日本を『反共の岩』と位置づけた」政策が進む一方、日本教職員組合が「教え子を再び戦場に送るな」をスローガンに「平和教育を取り組みはじめた」ことで、「『上からの国際理解教育』と「平和教育」との分離」が指摘される状況となったということである。戦後日本の平和教育が、教職員組合や民間教育研究団体等の教育運動に支えられて展開したことが、豊富な研究と実践を生み出すことになったのであるが同時に、「政治的対立が影を落とす」要因となったことも否定できない。しかしながら、ユネスコ憲章や日本国憲法の平和理念を共有する国際理解教育と平和教育は、本来共通の課題に取り組む親和性の高い教育領域であり、今日では両者を「分離」して対立的に捉えるのではなく、関連づけて捉える(国際理解教育と平和教育が相互に学び合う)のが一般的である。
◯ 尾藤葉菜さん
「留学体験を通して考える国際理解と平和」
国際理解を深める体験として、海外留学があります。尾藤さんはマレーシアへの留学から学んだこと、日本との文化の違いについてお話をいただきました。宗教や食生活、時間の捉え方など様々な違いを留学では肌で感じることができること。また、留学先での交流を通して、「あなたはどう考える?」という問いを留学生同士で話すことで「自分はどう生きていくのか」ということを考えるきっかけになったそうです。また、議論では日本の学校教育の中で平和学習の基層に「異なる他者を認め合える関係性をつくる」ことが大切であると発言がありました。
◯西村美智子先生の授業実践
「日本とコリアの歴史を学び、ともに未来を拓く」
西村美智子先生からは日本社会における「内なる国際化」の問題およびアジアの国々への向き合い方を問い直す「共生」のための「対話」としての歴史学習についてご報告をいただきました。まず、国際理解の土台としての文化交流として、在日コリアンの方との交流やチマチョゴリを着たり、韓国の食文化を体験したりするコリアDayを実施。体験を通じて朝鮮半島の文化に親しみます。体験を通して文化交流を行うだけでなく、真の国際理解のためにはお互いの国の歴史を学ばなければなりません。国際理解のための歴史教育として、近隣地域にある浅川地下壕での在日朝鮮人労働者の強制労働の実態から当時の日本と朝鮮半島の関係について学びます。
◯学芸会を通して学びを自分のものにする
西村先生の実践の中で、特徴的なものはこれまでの学びを子ども達が学芸会をつくることで体験的に自分たちの中に「落とす」ことができることです。今回の実践では学習のまとめともいえる学芸会で、過去の朝鮮人や支配者である日本人を演じることを通して、置き去りにされ忘れ去られようとしている在日コリアンの歴史と向き合い、その中で生きた人々との対話によって「もう一つの歴史」の存在を知ることができます。保護者や子どもの感想から、私たちが学んできたものが国民国家の歴史であり、犠牲となった人々、名もなき民衆の視点が欠落した歴史であったことを認識する
子ども達の姿が見えてきました。
今回の学習会では「国際理解教育と平和」というテーマのもと留学体験や学校での異文化理解、国際交流、人との出会いなど様々な体験学習を積み重ねることで子ども達の国際感覚や相手意識を育み、平和な社会の構築を目指す主権者の育成に繋がってい
くと考えます。

