■2020都知事選考

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まず、今回の都知事選は小池の一本勝ちという結果に終わるだろう。コロナ対策及び危機対応時における、現職候補の落選の可能性は極めて低い。また、与党の自民党公明党が候補者、公認を出さずに自主投票を決定している。前回の都知事選での恨み節がある自民党の票は分散されるだろう。一方で、党の足腰にあたる都政において一定の影響力維持を狙う公明党の票は、コロナ危機で学会の活動が鈍る事は必然でありながらも、小池の元にも流れるだろう。よって、自民党という最大の敵の不在、公明票の一部獲得、無党派層の支持を手堅く取り入れることで小池再選はほぼ確実と言っていい。

 

今回の都知事選で注目すべきは当選者ではなく、次点以下の、各候補者の得票率である。都知事選は過去数十年、不毛な人気投票の場と化してきた。よって都知事選では無党派層の動員が鍵を握る。今回の都知事選では私の注目する5人の候補者とその政策を簡単に比較分析してみたい。

 

新自由主義福祉国家論の対立

 

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今回の都知事選で、新自由主義的政策を掲げる候補者は維新の小野たいすけ(日本維新)がいる。維新は緊縮財政を旗印に大阪で一定の支持を手堅く広げ、国政及び東京都へと支持を広げている。昨年の参院選東京選挙区で5人目の候補に立憲民主の二人目を抑えて維新の候補が滑り込んだことは私にとって驚きであった。新自由主義に親和的な都民を維新が包括する事に、一定の成果を上げていると言えよう。

 


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一方で新自由主義路線への対抗として、福祉国家論を展開するのが共産、社民、立憲民主、国民民主の一部が推薦する宇都宮健児である。共産党が主導した野党統一候補の選定は、国民民主党野党共闘の枠組みに取り入れることができなかったという致命的なミスを犯しながらも、組織票をどれだけ固められるかで野党共闘の成果が図られる。小池との全面対決に気の進まない国民民主を取り込めなかった立憲民主は、またしても共産党に引きずられる形で野党共闘を後退させたのではないか。

 

同じく福祉国家論を展開するのが、れいわ新選組山本太郎である。組織票を重視する宇都宮に対して、山本はこれまで左派ポピュリズム的な政治手法に訴えてきた。財源の裏付けが不明確な中で、山本の左派ポピュリズムがどれだけ支持を集めるかによって、安倍政権の福祉政策に一定の影響を与えるだろう。宇都宮と山本の左派分裂選挙野党共闘に大きな影を落とすことになるのは確実である。

 

 

●右派ポピュリズムと排外主義的ポピュリズム

 

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次に一部の既得権益に対して、攻撃的手法に訴える右派ポピュリズムを展開する、ホリエモン新党(N国)と排外主義的ポピュリズム政党の日本第一党について注目したい。ホリエモン新党の立花孝志は、公共放送のNHKをはじめ、政党、検察などの既存のエリート層を批判することで支持を広げてきた。この現象は米国のトランプ現象や欧州各国に見られる右派ポピュリズム的性質を垣間見る事ができる。これまでポピュリズムとは無縁と思われていた日本でも上部層をターゲットにした下からの突き上げによるポピュリズムが広がりを見せるのかは注目に値する。

 

一方で排外主義的ポピュリズムの性格を有する、日本第一党桜井誠の得票数にも注目したい。桜井はインターネット上で在日朝鮮人の権利剥奪を訴えて、いわゆるネット右翼の支持を集めてきた。自身を「行動する保守運動」と称して、前回の都知事選では11万票を獲得した。(驚き!)特に日韓問題が停滞する中で、櫻井の前回の得票数と、今回の都知事選の結果を比較することは日本の排外主義的ポピュリズムの動向を見る事ができるのではないか。

 

都知事選の動向は国政にも大きな影響を与える。都知事選を不毛な人気投票とすることなく真に政策論争が展開される事を願うばかりである。