■安倍政権の恣意的な人事介入には反対

 

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安倍政権の恣意的な人事介入は今に始まった事ではない。憲法解釈の変更を断行した際にも内閣人事局長官の首をすげ替えた。この長期政権の特徴の一つは人事というカードにあると考える。「内閣人事局」の設置は明治維新以来の官僚制国家の我が国の体質を大きく変質させた。制度に絶対は無い。常に国民の監視が必要である。

 

 

 


検察庁改正法案に反対

 


検事総長検事長の定年延長を可能にする検察庁法改正案について安倍首相は今国会での成立を見送る考えを示した。この法案の問題点は検察トップの検事総長最高検事長検事、高検検事長は内閣の判断で最長3年、定年を延長できる特例規定にある。安倍政権は今年1月に東京検察検事長の黒川弘務の定年延長を閣議決定しており、今回の法案審議は黒川事件への後付け感が否めない。検察人事に政権の影響力が及べば、司法権の独立が損なわれるゆゆしき事態である。「安倍一強」の弊害とその限界がここに来て露わになっている。

 


憲法解釈を巡る人事

 


安倍政権の人事権の乱用は今に始まった事ではない。この長期政権の特徴の一つは人事というカードにある。思い起こせば14年の安全保障法制をめぐる憲法9条の解釈を変更した時も今回と同じやり口であった。これまで日本国憲法の元では集団的自衛権の行使は認められないとしてきた内閣法制局に安倍政権は公然と切り込んだ。通常、法の番人である内閣法制局長官の人事は解釈の一貫性を保つ為に内部昇格の慣習があった。しかし、安倍政権は従来の憲法解釈を示していた当時の内閣法制局長官を退任させ、小泉政権官房長官時代に共に憲法解釈の変更の可能性について意見を共有していた外務省出身の小松一郎にその首をすげ替えるという異例の人事を行い、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認させた。人事権を手にした安倍官邸は安定した議席の上に官僚人事までも支配下に収めることに成功したと言える。

 


内閣人事局の創設

 


安倍政権の政治主導を推し進める原動力は「内閣人事局」にある。これまでの慣習を見直して各省庁の局長級以上の幹部人事について官邸が内閣人事検討会議で審査する制度を14年に創設した。霞ヶ関の人事を官房長官と三副長官で支配する構造を手に入れたのである。内閣人事局の初代局長は加藤勝信、続いて萩生田光一と安倍首相に近い人物で固められている。菅官房長官を始め、副官房長官、五人の総理補佐官はいずれも官邸勤務は長期に及び、安倍官邸の背骨を形成している。ともかくも「内閣人事局」の設置は明治維新以来の官僚制国家の我が国の体質を大きく変質させた。この官僚人事権の掌握が吉と出たのか凶と出たのかは見ての通りである。安倍政権の官邸主導はこれまでの政権とは明らかに異質である。同じく官邸主導が注目された小泉政権の時代とは比べられないほど官邸機能が巨大化している。一連の政治改革による日本の制度を遅れたものとみなし、アメリカ型の制度を輸入して官邸機能を強化してきたツケがここにきている。制度に絶対は無い。常に国民の監視が必要である。